REPORT「土佐の植物暦」山好き社員の散策レポート

「土佐の植物暦」を片手に高知の山や公園を散策してみました!

「土佐の植物暦」
山好き社員の散策レポート
No.20

落ち葉に覆われた冬の雑木林。サクサクと乾いた踏み音が心地いい。歩き慣れたいつもの山道は一見、冬枯れに見えても木々の枝に目を凝らすと、陽光をたっぷり浴びた冬芽がふくらみかけています。

身近な散歩道や公園もあらためて見直すと、ツバキ、ウメ、サクラ、カリン、ヤマボウシ、ツツジにも冬芽。形、大きさ、色、それぞれに個性豊かです。冬の厳しさに人知れず耐え、春を待つ小さな生命の営みに心寄せたくなります。

寒気から守る

「土佐の植物暦」がセンダンの冬芽を紹介していました。「薄茶色の毛が冬の寒さから守っている。冬芽の下にあるT字形の部分は葉が落ちた跡で、葉痕(ようこん)と呼ばれる」。葉痕?初めて聞きます。

センダンを探し歩いて鏡川へ。土手沿いで大木に行き当たりました。根元に近い枝へよじ登り、枝先を間近に見ると、なるほど葉痕は丸っこいT字型です。半球型の冬芽には微細な毛がびっしり。寒気から守っているのでしょうね。

厚い毛皮のコート

すぐそばの高木には枝先の冬芽に長い白毛が密生。大きくて目立ちます。コブシ?、ハクモクレン?。何の木なのか、はっきりしません。春になり花が咲けば、いずれは分かるでしょう。今は寒さから守る厚い毛皮のコートをまとっているようです。

春を告げる花も

厳しい寒気の一方で、いち早く春を告げる花も。牧野富太郎博士ゆかりの佐川町牧野公園でバイカオウレンが咲いていました。花に顔を近づけてじっくり見ると中心部は複雑です。白い花びらに見えるのは萼(がく)、黄色の小さいのが花びらだそうです。博士が少年時代から好んだ花といわれ、数々のエピソードが残されています。

牧野少年を魅了

先ごろ発刊された朝井まかてさんの小説「ボタニカ」は博士の波乱に満ちた生涯を描いており、牧野少年が生家の裏山でこの花に話しかける場面から始まります。「土佐の植物暦」ではヒュウガオウレンを紹介。近年の新たな知見にもとづき、「高知県の低山に生えるものにはバイカオウレンの他に、地下茎が太くなるヒュウガオウレンがあると分かった。以前は日本各地に生えるものはヒュウガオウレンも含めバイカオウレンとされていた」。

ひっそりとたたずむ小さな花ですが、牧野少年を魅了し、今も小説家や研究者たちを引きつけてやまないようです。

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